本論考の最初に「経営者特有の四苦八苦がある」ということを説明した。
では、2600年前、仏教の開祖、ブッダは四苦八苦をどのように克服すると説いたのか。そこで説かれた教えが、苦・集・滅・道(くじゅうめつどう)の四諦(したい)である。
現代のビジネスでは「フレームワーク」という”思考の枠組み”があるが、まさにこの四諦はフレームワークであり、こうしたものが2600年も前に作られていたことが驚きである。四諦は悟るための四つの段階であり、現実をどのように把握し、どのように対処すべきかの具体的な方法論を四つの過程を用いて説いたものである。
四諦=苦諦(くたい)、集諦(じったい)、滅諦(めったい)、道諦(どうたい)
苦諦とは、この世はすべて苦であるという真理
集諦とは、その苦しみには様々な原因があるという真理
滅諦とは、その原因と取り除くことができれば、この苦も取り除くことができるという真理
道諦とは、その原因を取り除く方法は「八正道」であるという真理
四諦を分かりやすく説明するために、ブッダが説いた病気治療の例えを引用する(編集・発行人 竹本朝之『ブッダの言葉 仏陀と日本人』、東京、徳間書店、2012年)。少し長いが、四諦の思考の流れが分かりやすく説明されているので、ブッダと修行僧のやり取りを紹介する。
ブッダは修行僧たちに質問した。
「たとえば誰かが身体の調子が悪くなったとしよう。その場合はどうすればいいのか」
「まず、どこが悪いのかを確かめます」
「では、腹が痛かったとしよう。その場合はどうすればいいのか」
「なぜ、腹痛になったのかを聞きます。何か腐ったものを食べたのかもしれません。
暴飲暴食かもしれません」
「腹痛なのに酒を飲んだらどうなる」
「それはひどいことになってしまいます」
「頭痛薬ではどうか」
「それも正しくありません。その薬では腹痛はよくなりません」
「その通りである。よい医者は最初に病状を見て、苦しんでいる状態を観察する。
次にその病気がいかなる原因から引き起こされたのかを判断する。
そして、何を行ったら、その病気が治るかを想定する。
そして、判断に間違いがないとわかったら、その人に応じた治療を行っていく」
病気の状態を知り(苦諦)、その原因を知り(集諦)、病気が完治した本来の健康な姿を知る(滅諦)、病気を治すための治療法・薬を処方する(道諦)、これが病気治療をたとえにした四諦の説明である。
現状の苦しみを正しく観察し、その原因を特定する。そして、その原因が分かったのなら、その原因に応じた解決方法を実行するというのが四諦である。
ブッダは四諦というフレームワークにそって、苦しみの解決方法を教えたのである。
そして、ブッダは苦しみの解決方法として、八正道(はっしょうどう)という反省修法を教えている。
八正道については、この後に紹介するが、実はこの論考も四諦のフレームワークにそって、説明がなされている。
まず、経営者特有の四苦八苦があるということを書き、経営の苦の面を説いた(苦諦)。
次に、経営者にとって最大の苦である倒産事例研究から、倒産の原因を探求した。それは「放漫経営、未熟さ(心の弱さ、お人好し)、販売不振、外部環境の変化」の四つである。
更にこの4つの原因を経営トップの視点からとらえなおし、「経営トップの心の問題」と「経営トップの知識の問題」へと絞り込んだ(集諦)。
そして、ここからが苦を取り除く、つまり倒産を防止したり、経営不振を改善したり、会社のチームワークをよくしたりするための、実践的な方法(滅諦、道諦)へと展開するのである。
<続く>
※ この論考の著作権は、古賀光昭にあります。無断転載、使用を禁じます。
では、2600年前、仏教の開祖、ブッダは四苦八苦をどのように克服すると説いたのか。そこで説かれた教えが、苦・集・滅・道(くじゅうめつどう)の四諦(したい)である。
現代のビジネスでは「フレームワーク」という”思考の枠組み”があるが、まさにこの四諦はフレームワークであり、こうしたものが2600年も前に作られていたことが驚きである。四諦は悟るための四つの段階であり、現実をどのように把握し、どのように対処すべきかの具体的な方法論を四つの過程を用いて説いたものである。
四諦=苦諦(くたい)、集諦(じったい)、滅諦(めったい)、道諦(どうたい)
苦諦とは、この世はすべて苦であるという真理
集諦とは、その苦しみには様々な原因があるという真理
滅諦とは、その原因と取り除くことができれば、この苦も取り除くことができるという真理
道諦とは、その原因を取り除く方法は「八正道」であるという真理
四諦を分かりやすく説明するために、ブッダが説いた病気治療の例えを引用する(編集・発行人 竹本朝之『ブッダの言葉 仏陀と日本人』、東京、徳間書店、2012年)。少し長いが、四諦の思考の流れが分かりやすく説明されているので、ブッダと修行僧のやり取りを紹介する。
ブッダは修行僧たちに質問した。
「たとえば誰かが身体の調子が悪くなったとしよう。その場合はどうすればいいのか」
「まず、どこが悪いのかを確かめます」
「では、腹が痛かったとしよう。その場合はどうすればいいのか」
「なぜ、腹痛になったのかを聞きます。何か腐ったものを食べたのかもしれません。
暴飲暴食かもしれません」
「腹痛なのに酒を飲んだらどうなる」
「それはひどいことになってしまいます」
「頭痛薬ではどうか」
「それも正しくありません。その薬では腹痛はよくなりません」
「その通りである。よい医者は最初に病状を見て、苦しんでいる状態を観察する。
次にその病気がいかなる原因から引き起こされたのかを判断する。
そして、何を行ったら、その病気が治るかを想定する。
そして、判断に間違いがないとわかったら、その人に応じた治療を行っていく」
病気の状態を知り(苦諦)、その原因を知り(集諦)、病気が完治した本来の健康な姿を知る(滅諦)、病気を治すための治療法・薬を処方する(道諦)、これが病気治療をたとえにした四諦の説明である。
現状の苦しみを正しく観察し、その原因を特定する。そして、その原因が分かったのなら、その原因に応じた解決方法を実行するというのが四諦である。
ブッダは四諦というフレームワークにそって、苦しみの解決方法を教えたのである。
そして、ブッダは苦しみの解決方法として、八正道(はっしょうどう)という反省修法を教えている。
八正道については、この後に紹介するが、実はこの論考も四諦のフレームワークにそって、説明がなされている。
まず、経営者特有の四苦八苦があるということを書き、経営の苦の面を説いた(苦諦)。
次に、経営者にとって最大の苦である倒産事例研究から、倒産の原因を探求した。それは「放漫経営、未熟さ(心の弱さ、お人好し)、販売不振、外部環境の変化」の四つである。
更にこの4つの原因を経営トップの視点からとらえなおし、「経営トップの心の問題」と「経営トップの知識の問題」へと絞り込んだ(集諦)。
そして、ここからが苦を取り除く、つまり倒産を防止したり、経営不振を改善したり、会社のチームワークをよくしたりするための、実践的な方法(滅諦、道諦)へと展開するのである。
<続く>
※ この論考の著作権は、古賀光昭にあります。無断転載、使用を禁じます。